まぶたの病気

まぶたには眼球を保護したり視野を確保したりする役割がありますが、まぶたのトラブルでお悩みの方は多くいらっしゃいます。眼科を受診すべきか悩まれている方もいるでしょう。

主なまぶたトラブルには「ものもらい」と呼ばれる麦粒腫や霰粒腫、眼瞼下垂、逆さまつげである眼瞼内反症などの病気があります。

これらの病気を放置すると悪化する恐れがありますので、まぶたに異変を感じた場合は早めに眼科を受診しましょう。

自由が丘よつば眼科医院

院長木村友哉

大学病院や眼科専門病院での勤務経験から、白内障治療をはじめとした様々な症例に対して、豊富な治療経験や知見を持っています。
本院「きたあやせよつば眼科」と3つの分院のうち一つ、自由が丘よつば眼科の院長として2025年に就任。

ものもらい（麦粒腫・霰粒腫）

まぶたのトラブルで多いのが「ものもらい」や「めばちこ」です。ものもらいやめばちこは専門用語で「麦粒腫（ばくりゅうしゅ）」「霰粒腫（さんりゅうしゅ）」とよばれる病気です。
一般的に「ものもらい」とよばれるのが麦粒腫であり、目のかゆみや痛み、腫れなどの症状がみられます。一方で、霰粒腫はまぶたの一部にしこりが生じ、基本的に麦粒腫のような痛みは伴いません。
どちらも「はやり目」とは違い、他の人にうつす恐れはありません。
麦粒腫と霰粒腫のそれぞれの原因と治療法を詳しくご紹介します。

麦粒腫とは

麦粒腫とは、細菌感染によって引き起こされるまぶたの病気です。一般的に「ものもらい」や「めばちこ」などと呼ばれています。まぶたの分泌腺や毛穴に細菌が感染することによって、まぶたの腫れや痒み、痛みなどの症状が現れます。最初は軽度の痒みや目の充血程度の症状ですが、進行して悪化すると、化膿して腫れや痛みが強くなります。さらに進行することで膿が出ることもありますが、膿が排出されれば症状は回復します。
感染した場所によって内麦粒腫と外麦粒腫に分類され、まぶたの内側にあるマイボーム腺という分泌腺に感染した場合は内麦粒腫、まつ毛の毛根に感染した場合は外麦粒腫と呼ばれます。内麦粒腫のほうが外麦粒腫よりも痛みや痒みなどの症状が強く出やすい傾向にあります。
麦粒腫の原因となる主な細菌は、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌の常在菌です。感染力はそれほど強くないため、健康な状態であれば細菌感染を引き起こしませんが、疲労やストレスなどによって体の免疫機能が低下していると細菌感染を起こしやすくなります。
麦粒腫の治療方法は、抗菌薬の目薬や眼軟膏を処方します。症状が強ければ抗菌薬の内服を併用したり、切開して排膿させたりすることもあります。

霰粒腫とは

霰粒腫とは、まぶたの内側にある潤いを保つための分泌腺「マイボーム腺」の出口が詰まることによってできるしこりのことです。しこりの大きさは米粒〜大豆くらいの大きさで、目にできるイボのような見た目から「めいぼ」と呼ばれています。
霰粒腫は麦粒腫とは違って細菌感染を伴いません。無菌性の炎症であることが特徴です。
そのため、しこりによる目の違和感はありますが、痛みや赤みは生じません。ただし、経過中にしこり部分が細菌感染を起こした場合は、急性霰粒腫と呼ばれ、麦粒腫と同様に痛みや赤みなどの症状が現れます。
マイボーム腺の詰まりは、マイボーム腺の機能不全が原因です。ストレスや疲労による抵抗力の低下や、マイボーム腺が不衛生になっていることで機能不全が生じやすくなります。メイク汚れによって起きることも多いため、アイメイクをした後はメイク落としでしっかりと落とし、清潔に保つことが大切です。
霰粒腫の症状が軽度の場合は、点眼や眼軟膏による治療を行います。
しこりが大きい場合は、しこりに直接ステロイド薬の注射をしたり、手術によってしこりを取り除いたりする治療を行います。

IPLレーザーによる新しい治療方法

霰粒腫の治療にはステロイド注射や摘出術以外にIPLレーザーによる治療もあります。
IPLレーザー治療は光エネルギーを肌に照射する治療法です。一般的なレーザー治療とは異なり、熱が広がりやすく皮膚の浅い層に効率よく光エネルギーを届けられる特徴があります。

IPLレーザーによる霰粒腫の治療であれば、注射や手術を行わなくて済むため、患者様の負担を軽減できます。痛みが苦手な方や小さなお子様にも対応できる治療です。

また、両まぶた全体に照射することで、霰粒腫ができていない部分のアイボーム腺機能の改善も促され、再発防止にもつながります。霰粒腫を何度も再発している方にもおすすめの治療法です。

IPLレーザーによる治療を希望される方は、お気軽にご相談ください。

眼瞼下垂

眼瞼下垂とは、まぶたが下がってきて視界が狭くなる病気です。眼瞼下垂を大きく分類すると、生まれつきである先天性眼瞼下垂と、大人になってから生じる後天性眼瞼下垂の2種類があります。

先天性眼瞼下垂

先天性眼瞼下垂は生まれつきまぶたをしっかりと開けられない病気です。出生直後から症状がみられます。片側性と両側性の2種類がありますが、約80％が片側性であり多くの割合を占めています。
先天性眼瞼下垂の原因は、眼瞼挙筋と呼ばれるまぶたを上げる筋肉が生まれつき弱かったり、眼瞼挙筋を支配している動眼神経に不都合があったりすることが考えられます。
眼瞼下垂はまぶたが下がって視野が狭くなるため、下のほうでしか見ることができません。そのため、顎を上げた姿勢でものを見たり、眉毛を上げてものを見たりするようになります。
また、生後1ヶ月〜3歳頃までに視力が発達するため、先天性眼瞼下垂の場合は視力の発達に影響する可能性が高く、弱視や斜視の原因となることもあります。

後天性眼瞼下垂

後天性眼瞼下垂とは、まぶたがしっかりと開いていた人が加齢や長期のコンタクト使用などによって、まぶたが下がってくる病気です。
後天性眼瞼下垂の原因の多くが、加齢によるまぶたの筋力の低下や皮膚のたるみです。近年ではコンタクト装着者の罹患率が増えていることも報告されています。瞬きの際にコンタクトレンズがまぶたの内側に当たって、腱膜に対して継続して刺激を与えてしまうことが原因と考えられます。目を強く擦る癖がある方も、腱膜に刺激が加わりやすく後天性眼瞼下垂になりやすいため注意が必要です。
後天性眼瞼下垂は徐々に進行するため、自覚症状がないまま悪化してしまうケースも少なくありません。
視野が狭くなるのに対して、眉毛を上げたり顎を上げたりしてものを見るようになるため、額にシワができやすく、肩こりや頭痛などを引き起こすこともあります。
まぶたが開きにくくなった方や視野が狭くなったと感じる方は、眼科を受診してみましょう。

治療方法

先天性眼瞼下垂の治療は、手術が必要です。手術は基本的に3歳以降に行われることが多いですが、眼瞼下垂の程度が重度である場合は早期に手術を行うケースもあります。
手術には、挙筋前転術と筋膜移植術の2種類があります。挙筋前転術とは、まぶたを上げる眼瞼挙筋という筋肉を縫い縮める方法です。まぶたを持ち上げる機能がある場合に適用されます。
一方で、筋膜移植術とは、眉毛を上げる前頭筋とまぶたの間に筋膜を移植し、眉毛を上げる動作によってまぶたを開きやすくする方法です。まぶたを上げる力が非常に弱い場合や挙筋前転術では治療が難しい場合に適用されます。

先天性眼瞼下垂の手術方法

	挙筋前転術	筋膜移植術
治療方法	眼瞼挙筋を縫い縮めたり、位置を変えたりすることでまぶたの開きをよくする方法。	前頭筋とまぶたの間に筋膜を移植し、眉毛を上げる動作を利用することでまぶたを開きやすくする方法。
適用症状	症状が軽度であり、まぶたを持ち上げる機能がある場合に適用される。	まぶたを上げる力が非常に弱い、または全然ない場合に適用される。

※後天性眼瞼下垂の治療は、たるみによって余った皮膚を切除する方法と、眼瞼挙筋を適切な場所に縫い付ける挙筋前転術を行うことがほとんどです。

逆さまつげ（眼瞼内反症）

逆さまつげとは、まつ毛が角膜に接触している状態のことです。専門用語で「内反症」といいます。
本来、まつ毛はまぶたから外側に向かってカールしているため、眼球に当たりません。
しかし、逆さまつげの場合は眼球にまつ毛が当たってしまうため、角膜が傷つく、目が充血するなどの症状が現れます。これにより視力が低下する恐れもあるため、適切な治療が必要です。

逆まつげの種類

逆さまつげは症状によって3つに分類されます。

眼瞼内反症（がんけんないはんしょう）

まつ毛を含むまぶた全体が内側に向いてしまっている状態です。加齢によってまぶたの皮膚がたるんだり、まぶたを閉じる筋肉が緩んだりすることが主な原因です。なかには、先天性眼瞼内反症の場合もあります。この場合、生まれつき逆さまつげになっていても成長することで改善することが多くあります。小学校高学年になっても改善がみられず、重い症状がある場合は手術を検討したほうがよいでしょう。

睫毛内反症（しょうもうないはんしょう）

まぶたやまつ毛の向きは正常であるものの、まぶたの皮膚が厚いためにまつ毛が押し倒され逆さまつげになっている状態です。睫毛内反症の多くは先天的なもので、生まれつき逆さまつげになっています。成長することで顔が引き締まり改善することが多いでしょう。生まれつきの場合はお子様本人が逆さまつげの状態に慣れてしまっているため、症状や痛みについて保護者の方が問いかけをして確認することが大切です。

睫毛乱生症（しょうもうらんせいしょう）

まぶたの向きは正常であるもののまつ毛の生え方が乱れていて、一部のまつ毛が眼球に当たってしまっている状態です。まつ毛の生え方が乱れる原因は、毛根周囲で起きた炎症によるものが多いといえます。

逆さまつげの症状は？

逆さまつげの主な症状には以下のようなものがあります。

目がチクチクする
目の中がゴロゴロするような不快感がある
目の痛み
涙目
目の充血
目を開けているのが辛い
まぶしく感じる
目やにが出る

1つでも当てはまれば早めに眼科を受診して適切な治療を受けるようにしましょう

逆さまつげの症状が1つでも当てはまる場合は早めに眼科を受診しましょう。
自覚症状があるにもかかわらずそのまま放置してしまうと、まつ毛が当たることで角膜や結膜を傷つけてしまう恐れがあります。
また、適切な治療を行わないままだと悪化してしまいます。症状が悪化することで角膜に潰瘍ができて白く濁ったり、視力に影響したりすることもあります。

POINT

特にお子様の場合は、逆さまつげの状態に慣れてしまい症状を訴えないことも少なくありません。
目を擦ったり、目を開きづらそうにしたりしていないか、保護者の方がよく観察してあげてください。気になる症状がある場合は、まつ毛が眼球に当たっていないかチェックしてみましょう。
逆さまつげである場合は、早めに眼科を受診し重症化する前に適切な治療を受けましょう。

逆さまつげの治療方法

逆さまつげの治療は、まず細隙灯顕微鏡を用いてまつ毛の生え方やまぶたの向き、眼球の状態を詳しく調べます。
逆さまつげの程度が軽度である場合は、角膜を保護する目薬を処方し、経過観察で様子をみます。
重度の症状がみられる場合や、頻繁にトラブルが起きる場合は手術を行うこともあります。
手術内容はまつ毛の生え方やまぶたの形、患者さまの年齢によって異なります。子どもの睫毛内反症の場合は、成長によって自然と改善することも多いため、様子をみながら適切な処置を行います。子どものまつ毛は大人のまつ毛に比べて柔らかく、眼球に当たってもそれほど強い刺激はありません。
視力の発達に影響する場合や、角膜の傷から感染を起こす場合は早めに手術をする必要がありますが、大きなトラブルがなければ手術を行えるようになる小学生頃まで様子をみることが多いでしょう。

当院では睫毛抜去に対応しております。

当院の逆さまつげの治療では睫毛除去という処置も行っています。
睫毛除去とは、トラブルの原因となるまつ毛をピンセットで抜く治療です。睫毛除去は、睫毛乱生症や眼瞼内反症のように問題となるまつ毛の本数が少ない場合に適用されます。
睫毛除去を行うことで症状が改善しますが、まつ毛が再度生えてくることで同じような症状を繰り返す可能性もあります。そのため、定期的な通院が必要です。

まとめ

まぶたのトラブルでお悩みの方は多くいらっしゃると思いますが、眼科を受診すべきか悩まれている方も少なくないでしょう。しかし、まぶたは眼球を保護したり視野を確保したりする大切な役割があり、放置することで悪化する恐れや日常生活に支障をきたすことがありますので、まぶたに異変を感じた場合は早めに眼科を受診しましょう。

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